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  • 2017/7/22

糖尿病予備軍といわれたら絶対に知っておきたいこと

糖尿病

これまで健康に自信はあったのに、検診や人間ドックで、突然、糖尿病予備軍と診断されれば誰でもギョッとするもの。糖尿病の予備軍とはいったいどういうこと?どうすれば予備軍から脱出できるの?そんな不安と疑問にお答えして、血糖値をスムーズに安定させるために役立つ食事と運動のポイントをご紹介します。

1.糖尿病の一歩手前のグレーゾーンが予備軍と呼ばれる

健康な人より血糖値はやや高いが、完全に糖尿病とは診断できない。このように、糖尿病の一歩手前のグレーゾーンにいる人を「糖尿病予備軍」(境界型糖尿病)と呼びます。一歩手前とはいえ、「まだ本当の糖尿病じゃないから安心だ」と油断するのは禁物。

糖尿病予備軍と診断されると、2年間で約4人に1人が完全な糖尿病に進むという調査結果があります。年数がたつほど、この割合はますます増えていくことになります。だからこそ、糖尿病予備軍入りの2大原因である「食べ過ぎと運動不足」をこの段階で見直して、血糖値の安定に努めることが大切なのです。

2.糖尿病が進行すると体調が急激に悪化する

糖尿病予備軍の段階では、自覚症状はほとんど現れません。 ただし、血糖値が予備軍レベルを超えると、以下のような体調異変が次々と生じるようになります。

  • 尿の異常(昼夜を問わずひん尿になる、尿から甘い臭いがする、尿の泡が増えるなど)
  • のどが異常に渇く
  • だるくて疲れやすい
  • 体がやつれていく
  • 肌がかゆい
  • こむら返りを繰り返す
  • ED(勃起障害)になる

こうした体調異変が現れながらも、血糖値が適切に管理できなければ、糖尿病の末期段階である合併症を招いてしまうことになります。 手足の神経障害から、感覚マヒや壊疽(小さな傷が化膿して組織が腐る)を起きる、目の網膜の血管が破れて視力を失う(糖尿病性網膜症)、腎不全を起こして人工透析が必要になる(糖尿病性腎症)など、糖尿病の合併症は一度発症すると回復は容易ではありません。

そのため、一般に糖尿病治療では何をおいても、血糖値の悪化を抑えて合併症の発症を防ぐことが最大の目標とされています。

3.糖尿病予備軍から脱出するための食事のポイント

 糖尿病が進行すると、薬の服用やインスリン注射とともに厳しい食事制限が必要になります。しかし、糖尿病予備軍のレベルであれば、通常は病院から薬が出ることはなく、食事制限も厳密には指示されません。病院の治療がただちに必要なほど、深刻な病状ではないからです。まずは、これまでの食事の悪習慣(大食いや間食の摂りすぎ)を見直して、食事の摂取カロリーを適正に抑えること。毎日のこの心がけが、血糖値の安定に直結します。

3-1.自分にとって適正な摂取カロリー量を知ることが第一歩

糖尿病の予備軍と診断されても、「これを食べてはいけない」というものはありません。ほとんどの人の場合、血糖値が上がってしまった理由とは、長年にわたるカロリーの摂取過多。すなわち、食べ過ぎが根本原因なのです。そこでまず大切なのは、自分にとって適正な摂取カロリーを知ること。毎日の食事でこの適正カロリーを超えないようにすることが、糖尿病予備軍を脱出するための第一歩です。

適正な摂取カロリーの計算方法

①標準体重を計算する

身長(m)×身長(m)×22(BMIという体格指数の標準値)=標準体重□□kg

※身長172cmの人ならば、1・72×1・72×22で、標準体重は約65kgとなります。

 

②標準体重と身体活動量から適正な摂取カロリーを計算する

標準体重□□kg×身体活動量□□kcal/kg=1日の適正な摂取カロリー□□kcal

※身体活動量とは、日常の活動量を目安とした体重1kgあたりの必要カロリー量のこと。

・軽度の活動(事務職中心の人、主婦など)は25~30kcal/kg

・普通の活動(外回りの多いサラリーマン、立ち仕事の人など)は30~35kcal/kg

・重度の活動(肉体労働の多い人など)は35~kcal/kg

※標準体重65kgで身体活動量が普通の人は、65×30および65×35で、1日の摂取カロリーは1950~2275kcalとなります。 

3-2.カロリー調整して血糖値を下げるコツは主食のご飯・麺を減らすこと

一例として、3食合計の摂取カロリーを1950kcalに抑える場合、1食で摂るカロリーは単純計算で650kcalとなります。とはいえ、朝食の摂取カロリー量が少なければ、昼食はやや多めの700~800kcalにしてもかまいません。逆に朝食・昼食で食べ過ぎていれば、夕食はやや控えめにすればよいわけです。

参考/主なメニューの標準的なカロリー

  • ミックスサンド…約460kcal
  • ハンバーガー…約270kcal
  • 刺身定食…約600kcal
  • さばのみそ煮定食…約750kcal
  • しょうが焼き定食…約830kcal
  • レバニラ定食…約730kcal
  • チャーハン…約770kcal
  • ラーメン…約420kcal
  • 天ぷらそば…約590kcal
  • カレーライス…約760kcal
  • カツ丼…約840kcal

そこで、それまでの食事でやや食べ過ぎたので、次の食事で摂取カロリーを減らしたい場合、一番おすすめの方法は、ご飯・麺・パンなどの主食を食べないか、または食べる量を減らすこと。主食の栄養素のほとんどを占める糖質は、消化器官でブドウ糖に分解されて体のエネルギー源となります。そのため、糖質を摂りすぎると、ブドウ糖が血液中にあふれて血糖値が一気にはね上がってしまうのです。

一方で脂質やタンパク質は、糖質ほど直接的に血糖値の上昇には結びつきません。つまり、同じカロリーダウンを実践するなら、おかず(肉や魚)よりもご飯や麺を控えた方が、血糖値の上昇を効率的に抑えられるわけです。一般に1食の主食のカロリーは300~400kcalが目安といわれています。

「今日は食べ過ぎた」と思ったら、この主食分のカロリーを全部カットする、または半分程度に減らすことが血糖値の適切なコントロールにつながります。

主な主食のカロリー

  • ご飯(普通に1膳150g)……約250kcal
  • 丼飯(1人前240g)……約400kcal
  • うどん(1人前200g)……約210kcal
  • そば(1人前160g)……約210kcal
  • 中華麺(1人前200g)……約310kcal
  • 食パン(6枚切り1枚・60g)……約160kcal

3-3:間食には乳製品やゼリーを活用

小腹が空いたときに食べる間食も、もちろん1日の摂取カロリーのうちにカウントされます。 だからといって、完全に食べることを我慢する必要はありません。むしろ、間食を摂らないで空腹感が長く続くと、その後の食事でつい食べ過ぎることが多くなります。そのため、適度に間食を摂って、小腹を埋めることも決して悪いことではありません。

注意したいのは、砂糖たっぷりの洋菓子や和菓子(ケーキ、ドーナツ、まんじゅうなど)で、これらは血糖値をてきめんに上げてしまいます。ポテトチップなどのスナック菓子も、原料のジャガイモや小麦粉が糖質を多く含んでいるので控えたいもの。間食におすすめなのは、ヨーグルト(無糖)やチーズなどで、乳製品は糖質ではなくタンパク質と脂質が多いため、腹持ちがよく血糖値も上げにくいというメリットがあります

。カロリーゼロ、または低カロリーのこんにゃくや寒天を原料にしたゼリーや、カロリー控えめの大豆バー・雑穀バーなどもおすすめです。チョコレートならばミルクや砂糖を多く使ったものでなく、ビターやブラックタイプを選びましょう。

4.糖尿病予備軍から脱出するための最適運動はやはりウォーキング

糖尿病予備軍から脱出するために、食生活の見直しと同時に運動がすすめられる理由は大きく2つあります。ひとつは、体を動かすことで血糖をエネルギーとしてどんどん消費すること。さらに脂肪もエネルギーに使われるために、内臓脂肪が減っていくことも大きなメリットなのです。お腹まわりにためこまれる内臓脂肪は、インスリン(膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン)の効き目を悪くして、糖尿病を悪化させるやっかいな存在。

逆にいうと、運動することでこの内臓脂肪が減れば、インスリンの効き目がアップして、血糖値がスムーズに安定していくわけです。大汗をかいて無理にがんばらなくとも、自分なりのペースで運動を継続すれば、糖尿病予備軍を返上する日が確実に近づいてきます。

4-1:血糖値を安定させる一番手軽な運動はウォーキング

特別な準備や道具なしで、今日からすぐにできる運動といえばやはりウォーキング。歩くことは立派な有酸素運動(持続的にエネルギーを消費する運動)であり、ジョギングなどにくらべて、足首・膝の関節や心肺機能などへの負担もかかりません。そのため、糖尿病治療にたずさわる医師も、最適の運動療法として歩くことを例外なく推奨しています。

特に以下の3つのポイントを踏まえてウォーキングをすると、何も工夫せずにただ歩くよりも、血糖値の効率的な改善につながります。糖尿病予備軍からの脱出を強力に手助けしてくれるのです。

①時速6kmの早歩きをする

ウォーキングの運動効果がより見込めるのは、散歩程度のゆっくり歩きよりは、キビキビと足を進める早歩きです。軽く汗ばむ程度の無理のないペースで、脂肪燃焼にも効果的とされているのは、時速6km(1分で100m歩く)の早歩き。この速さで1時間歩くと、消費されるエネルギーは約250kcal(ご飯1杯分のカロリー)。普通の速さで歩くよりも、エネルギー消費量は1・5倍近くに増えるのです。

 ②1回10分以上・1日トータルで50~60分歩く

運動を始めるとしばらくの間は、筋肉内のグリコーゲンがエネルギーとして使われます。血液中の糖が消費され始めるのは、運動開始から10分以上が過ぎてからです。一度に長時間歩くことが難しければ、10分以上のウォーキングを何回かに分けて実行してもかまいません。1日トータルの歩行時間が50~60分になるようにしましょう。

 ③食事の30分~1時間後に歩く

歩く時間帯は仕事や家事の後などいつでもかまわないのですが、できれば3度の食事の後に歩く習慣をつけたいもの。1日トータルの歩行時間は同じでも、食後30分~1時間後に10分間歩く人は、食後に歩かない人よりも、血糖値がきわだって改善するという報告があります。特にご飯や麺類など糖質が多い食事を摂った後に歩くと、ウォーキング効果が大きくなって、血糖値がよく下がることもわかっています。

4-2:自宅ですぐできる!血糖値を下げる簡単エクササイズ

天気が雨だったり、忙しくてウォーキングの時間が取れないときは、自宅で簡単にできるエクササイズがおすすめです。筋肉量のアップはもちろん、手足などの末梢から全身の血行がよくなって、血糖のエネルギー消費が促されます。

ゴキブリ体操

腹筋、背筋などを鍛えつつ、お腹まわりの脂肪も減らせるエクササイズです。医師も糖尿病患者に推奨して、血糖値の改善例も多数報告されています。血糖をエネルギーとして消費する場所とは、すなわち筋肉。その筋肉の量が増えれば、高血糖が解消されやすくなるわけです(逆に筋肉の量が少ない人は、糖尿病が重症化しやすいというデータがあります)手足の毛細血管の血流も盛んになることから、ますます血糖のエネルギー代謝が活性化。糖尿病の合併症である手足の神経障害の予防にもつながります。

≪やり方≫

①あお向けに寝て、両手・両足を真上にまっすぐ伸ばします。

②手足をブルブルと細かく震わせるように動かします。30秒続けて30秒休むのが1セット。1日5セット行います。

内腿マッサージ

内腿をよくほぐすと、インスリン(血糖値を下げるホルモン)を分泌する膵臓に血液が流れ込んでいきます。それによってインスリンの分泌力がアップすることで、血糖値が下がりやすくなります。

≪やり方(左足の場合)≫

①椅子に座って左足を伸ばして、左手でひざの外側を押さえます。

②右手の手のひらを左足のつけ根にあてます。

③手の指と手のひら全体を使って、ひざに向かって内腿をもみほぐしていきます。1~2分繰り返します。

④右足を同じ要領でもみほぐします。1日1回行います。

踏み台昇降

太腿とふくらはぎの太い筋肉を強化することで、血糖のエネルギー消費を促進します。

≪やり方≫

①家の階段や段差(高さ20cmくらい)の前に立ちます。

②太腿を高く上げるように意識して、片方の足を段の上に乗せます。

③同じ要領でもう片方の足も上げて、段の上に両足で立ちます。

④先にあげた足から下ろして、①の姿勢に戻ります。リズミカルに繰り返して、1日2分行います。

5.ここまで改善すれば糖尿病予備軍を晴れて脱出!

糖尿病の診断は一般に、空腹時血糖値、食後2時間血糖値、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の検査結果が基準とされます。ヘモグロビンA1cは血糖と結合したヘモグロビンのことで、この量を調べると、検査前1カ月間の血糖値が平均的に高いかどうかがわかります。血糖値がずっと高いと、ヘモグロビンA1cの値も高くなります。下記の3つの基準値がすべてクリアできれば、糖尿病予備軍から晴れて脱出できたことになります。

糖尿病予備軍脱出のために目標とする検査数値

  • 空腹時血糖値 110mg/dl未満
  • 食後2時間血糖値(ブドウ糖負荷試験)
  • 140mg/dl未満 ヘモグロビンA1c 6.2%未満

6.まとめ/「糖尿病予備軍の段階でわかってよかった!」と気持ちを切り替えて

もとどおり健常な体を自分で取り戻すか、糖尿病に足を踏み入れて合併症にさらされるか。糖尿病予備軍という診断は、あなたが健康維持の分岐点にいることを知らせるメッセージともいえます。糖尿病予備軍と突然診断されてうろたえるよりは、「この段階でわかってよかった!」と気持ちを切り替えて、食生活や運動の習慣を前向きに見直しましょう。予備軍レベルであれば、厳しい食事療法・運動療法を行わずに血糖値を安定させることは、決して難しくはないのです。