日本人にとって一番なじみ深い飲み物である緑茶。血糖値や血圧のコントロールに役立つ、ダイエット効果もあるなど、体にうれしい効能も続々報告されています。
こうした緑茶の健康パワーを100%摂り入れるには、お茶として飲むよりも、「緑茶を食べる」方がぐんと効率的。緑茶をミルサーで細かい粉末状にして、料理のトッピングに活用しましょう。市販されているパウダー状に加工した緑茶を用いてもOKです。
目次
1.緑茶のカテキンが発揮するさまざまな健康効果
緑茶が中国から日本に伝来したのは平安時代のこと。緑茶を飲む習慣を国内で広めた栄西禅師は、著書の『喫茶養生記』の中で「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙薬なり」と述べています。緑茶は日本に伝えられた当初から、単なる嗜好品ではなく、長寿の秘訣として普及していったわけです。
緑茶の成分分析によると、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、コエンザイムQ10(細胞のエネルギー産生を助ける補酵素)などの栄養素が豊富に含まれていることがわかっています。とりわけ、緑茶ならではの有効成分として、脚光を集めているのがカテキン。緑茶の苦みをかもし出すポリフェノールの一種です。
このカテキンが血糖値の安定、ダイエット、血管の老化予防など、さまざまな健康パワーを発揮してくれます。
1-1.血糖値を安定させる
緑茶のカテキンには、食事で摂取した糖質の吸収を遅らせて、食後血糖値の急上昇を抑える作用があります。α‐グルコシダーゼという糖質を分解する酵素の活動を抑えるのです。そのため、ご飯、パン、うどんなど、糖質の多い食品を食べたときには、緑茶を口にすることで食後の高血糖の防止に役立ちます。
なお、血糖値をスムーズに下げるには、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用が不可欠です。インスリンは血液中にあふれた糖を筋肉などの細胞に取り込ませて、血糖値を下げる働きをします。これまでの研究から、緑茶のカテキンはすい臓の細胞を保護してインスリン分泌を促すほか、インスリンの効き目も向上させて(インスリン抵抗性の改善)、血糖値を安定させる可能性があると報告されています。
1-2.ダイエットをサポートする
肝臓で脂肪の合成に働く酵素の活動を抑えつつ、反対に脂肪の分解に働く酵素の活動を高めることも、緑茶のカテキンの特徴です。すなわち、カテキンは「脂肪がたまりにくい体質」「脂肪が燃えやすい体質」への改善を手助けするのです。同じく緑茶に含まれるカフェインによって、こうしたダイエット効果がさらに強化されます。
カテキンの作用で余分な内臓脂肪が減少すると、血糖値がますます安定するようにもなります。内臓脂肪はインスリンの効き目を悪くする悪玉物質を分泌して、血糖値の上昇を引き起こすやっかいな性質があるからです。
1-3.血管の老化を抑える
血管の老化である動脈硬化が進行すると、血管のしなやかな弾力が失われて強度が低下するため、脳や心臓の血管が詰まったり、破裂するリスクが高くなります。この動脈硬化の誘因となるのが、呼吸で取り入れた酸素から発生する活性酸素です。活性酸素は血管の細胞や血管壁にたまった悪玉コレステロールを酸化させて(サビつかせて)、動脈硬化の進行を加速させるのです。
そこで、活性酸素の害を取り除くために、貴重な働きをするのが緑茶のカテキンです。活性酸素を消去する抗酸化作用を発揮して、血管本来のしなやかな弾力を保護するのです。こうして動脈硬化の進行が抑えられれば、脳や心臓の血管の詰まり・破裂を防ぐことにもつながります。事実、「緑茶を多く飲む人は、脳や心臓の血管の病気で死亡するリスクが低い」というデータも報告されています。
1-4.血圧の上昇を抑える
緑茶のカテキンは血圧を上昇させる酵素の活動を抑制するとともに、血管の筋肉をゆるめて拡張させることで、血圧の安定をサポートします。血液中の血小板が過剰に固まらないように調整することも、カテキン独特の作用です。血小板の固まりやすさが改善されると、血液の流れがスムーズになって、血圧安定がいっそう促されます。
そのほか、緑茶のうま味成分であるテアニンには、ストレスによる緊張を緩和して、血圧上昇を抑える作用があることも報告されています。
2.緑茶は飲むよりも食べる方がおすすめ
緑茶の健康パワーがすごいことはわかったけれど、それなら普通にお茶にして飲めばいいのでは?そう思われる方もいるかもしれません。けれども、緑茶の効能を余さず摂り入れるには、飲むよりも食べる方がずっと手軽かつ効率的なのです。
2-1.飲む緑茶は栄養の30%しか摂取できないが、緑茶粉末を食べれば100%!
茶葉にお湯をそそいで、普通にお茶として飲む場合、緑茶の栄養成分をすべて摂取することはできません。カテキン、テアニン、カフェイン、ビタミンCなどはもちろんある程度、お湯に溶け出しますが、その大部分が茶殻に残ってしまうのです。また、ビタミンAや食物繊維など、不溶性の成分はお茶には溶け出しません。
結果的にお茶に溶け出す緑茶の栄養素は30%に過ぎず、残りの70%は茶殻に残るといわれています。緑茶を飲んだ後、茶殻を佃煮にしたり、チャーハンの具にすれば残り70%の栄養素も摂取できますが、やはり手間がかかるもの。一方、緑茶を粉末して食べるようにすれば、こうした栄養素の摂り逃しはありません。緑茶の効能を手軽に丸ごと体に摂り入れて、血糖値や血圧の安定に役立てることができます。
2-2.緑茶粉末なら小さじ1杯食べればいい
健康増進に役立てるために、緑茶を1日に飲む量としては、湯飲み5~10杯程度が推奨されています。一般的な湯飲み1杯分の容量は120mlですから、計600~1200mlを飲むことになるわけです。これは日常的にお茶を飲むことが習慣になっている人には、決して無理な量ではないでしょう。しかし、これから健康法として取り入れようとする人が、毎日それだけの量の緑茶を飲むのは、やや苦痛を感じるかもしれません。
栄養素を余さず摂取できる緑茶粉末を活用すれば、そうしたストレスは一切なし。粉末にして作り置きして、1日小さじ1杯を料理にふりかけて食べればいいのです。緑茶の風味と相性のいい食品は意外と多く、毎日無理なく続けられます。
3.緑茶粉末の作り方
緑茶はそのまま食べると噛みづらかったり、苦みが口に残るなどの難点があります。そこで粉末状にすることで、さまざまな料理においしく幅広く活用することができます。
3-1.カテキンの含有量が多い煎茶を用意する
お茶の栽培過程で、日光をさえぎって育てる高級な玉露やかぶせ茶よりも、日光に当てて育てる一般的な煎茶の方が、カテキンの含有量は多いといわれています。茶葉が日光に当たって光合成をすることでカテキンが作られて、蓄えられる量が増えるからです。また、煎茶は摘み取る時期が早い順から、上級煎茶・中級煎茶・下級煎茶に分けられます。
うま味成分のテアニンが多いのは上級煎茶ですが、日光により長く当たっている下級煎茶の方がカテキンの含有量は多くなっています。高級な緑茶を奮発して買わなくとも、むしろ安い煎茶の方がカテキンの摂取には適しているわけです。
3-2.緑茶をミルサーにかけて粉末状にする
①1日分として、緑茶小さじ1杯・3g程度をミルサー(乾燥食品を粉砕する調理器具)に入れます。
②緑茶が粉末状になるまでミルサーを回します。あらめにするなら5~10秒、細かいパウダー状にするなら50秒程度が目安です。
③食事どきやおやつどきに料理にふりかけるなどして食べます。余った緑茶粉末は保存用のビニール袋に入れて密封し、冷暗所で保存します。2週間~1カ月を目安に食べ切りましょう。
※ミルサーがご家庭にない場合
緑茶をすり鉢に入れて、すりこぎで細かく砕きます。ただし、やはり時間と手間がかかるのはいたし方ないところです。それならば、市販されている粉末状の緑茶を常備しておく方が手軽でしょう。ラベルを確認して、茶葉そのものを粉末加工した製品を選ぶようにします。
4.緑茶粉末のおいしい活用術
できあがったら料理や食材にかけて食べるだけの緑茶粉末。オムレツ、パスタなどに混ぜたり、ふりかけてもおいしくいただけます。特にカルボナーラなどクリーム系のパスタは、緑茶粉末を合わせると油っこさがやわらいで食が進みます。一例として風味の相性がよく、健康パワーも補強される手軽な食べ合わせをご紹介しましょう。
4-1.緑茶粉末ヨーグルト
ヨーグルトに適量の緑茶粉末を混ぜて食べます。ヨーグルトの乳清(表面にたまる液体)には、インスリン分泌を刺激する作用があるといわれています。インスリンの効き目を向上させる緑茶のカテキンとの相乗作用で、血糖値の安定に役立ってくれます。無糖・低脂肪のヨーグルトを選ぶとよいでしょう。
4-2.緑茶粉末納豆
納豆に適量の緑茶粉末を混ぜて食べます。納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素は、血管を詰まらせる血栓を溶かす作用があります。血栓を抑える緑茶のカテキンの効能も加わって、血液の流れを良好に保つことに役立ちます。
4-3.緑茶粉末ポテトサラダ
ポテトサラダに適量の緑茶粉末をかけて食べます。ジャガイモには血管の老化防止に役立つビタミンCや、血圧安定に働くカリウムが豊富。ただし、その一方で糖質の含有量も多く、食後血糖値を上げやすい点が気になるところです。そこで、ジャガイモを緑茶粉末と一緒に食べれば、カテキンの作用で血糖値の上昇をゆるやかにすることができます。
4-4.緑茶粉末ふりかけ
緑茶と一緒に以下の材料をお好みでミルサーにかけて、おいしくヘルシーなふりかけを作りましょう。ご飯にかけて食べれば食後血糖値の上昇が抑えられるほか、血管の老化防止や血圧安定など緑茶のカテキンの効能が増強されます。
【緑茶粉末と一緒にふりかけにしたい食材例】
・ゴマ(抗酸化物質であるセサミンが血管の老化を抑える)
・桜エビ(動物性食物繊維のキチンキトサンがコレステロールを下げる)
・クルミ(αリノレン酸という脂質がインスリンの効き目の向上に働く)
・かつお節(アミノ酸の結合であるペプチドが血圧の上昇を抑制する)
・ちりめんじゃこ(DHA、EPAという脂質が血管の老化を抑える)
4-5.緑茶粉末ラテ
温めた牛乳に適量の緑茶粉末を溶かせば、緑茶粉末ラテが即できあがり。甘みづけにはハチミツを加えましょう。アイスで飲む場合は、緑茶粉末を少量の熱湯で溶いてから、冷たい牛乳に混ぜるようにします。抗酸化力があるカカオポリフェノールを含むココアや、末梢の血液循環を促すショウガを加えれば、緑茶のカテキンの効能がさらに強化されます。
5.まとめ
食後やおやつどきに飲む緑茶は、気持ちをゆったり落ち着かせる至福の一杯です。さらに健康増進を考えて、カテキンなど緑茶の栄養成分を余さず摂り入れるなら、最適なのは緑茶を食べること。血糖値や血圧が気になる、お腹の脂肪を何とかしたいという方に、パパッと作れる緑茶粉末を活用されることをぜひおすすめします。
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