一般のスーパーなどでごく手軽に入手できるくるみは、血糖値の安定や血管の老化防止など、多彩な効能を秘めているヘルシーナッツです。おやつやお酒のつまみにポリポリかじるのもOKですが、ひと工夫してヨーグルトにトッピングして食べるとさらにパワー増強。糖の不安解消のお助けメニューとしてぜひご活用ください。
1.くるみヨーグルトって何?
くるみを砕いて、無糖のヨーグルトにふりかければ即できあがり。まろやかなヨーグルトに包まれた、くるみの香ばしさと歯ごたえを楽しみながら、よく噛んでいただきましょう。糖の安定により役立てるには、食前に食べるのがおすすめです。
2.くるみの健康効果とは?
北半球を中心に約20種類が分布しているくるみは、世界各国で親しまれているナッツで、日本でもオニグルミ、ヒメグルミなどの種類が自生し、縄文時代から食用とされてきたことがわかっています。近年の栄養分析からわかってきたのが、くるみにはα‐リノレン酸という脂肪酸が豊富で、その含有量はナッツの中でもずば抜けていること。
植物性オイルであるα‐リノレン酸は、専門的にはオメガ3(n‐3系)脂肪酸として分類され、魚に含まれる海洋性オイルのDHA・EPAなどと同じ種類に属します。くるみならではの健康効果の源がこのα‐リノレン酸で、さらにバランスよく含まれているビタミン、ミネラルが健康増進をサポートします。
2-1.血糖値を安定させる
α‐リノレン酸には、すい臓から分泌されるインスリンの効き目を高める作用があります。インスリンとは体内で唯一、血糖値の低下に働くホルモン。血液中の糖を筋肉や肝臓の細胞に届ける役割があり、それによって血糖値を正常レベルに保つのです。
ところが、肥満や運動不足などの要因が重なると、インスリンの効き目が悪くなって、血液中に糖があふれてしまうことになるのです。そこで、くるみに豊富なα‐リノレン酸は、インスリンを受け入れる細胞の感受性を高めて、糖がスムーズに処理されるように促します。
この働きを専門的には「インスリン抵抗性の改善」といいます。アメリカで行われた疫学調査でも、くるみを積極的に食べる人は、2型糖尿病(食べ過ぎや運動不足などが原因で起きる糖尿病)の発症リスクがほぼ半減すると報告されています。
2-2.悪玉コレステロールを減らして血管の老化を防ぐ
血管の老化、すなわち動脈硬化を進行させる原因となるのが悪玉コレステロールです。血液中の悪玉コレステロールが増えると、血管壁にもぐりこんで酸化する(サビつく)ことで、いわばゴミとなって蓄積していきます。
これが繰り返されることで、血管のしなやかな弾力が失われて動脈硬化が進み、詰まりやすい・破れやすい血管になってしまうのです。くるみを食べると、このやっかいな悪玉コレステロールが低下することが国内外の研究から明らかになっています。くるみに豊富なα‐リノレン酸が、善玉・悪玉コレステロールのバランスを改善すると考えられています。
そのほか、α‐リノレン酸は血栓(血液の固まり)を防いで血流を改善したり、血管の炎症を抑えるという研究結果も報告されています。血管の健康をトータルでケアする脂肪酸と評価できるでしょう。
2-3.脳の機能を維持する
α‐リノレン酸が豊富なくるみは最も手軽なブレインフード、すなわち脳に活力を与える食品としても注目されています。α‐リノレン酸をはじめとするオメガ3脂肪酸は、脳の神経細胞膜の材料となって、神経細胞の栄養補給を正常に維持し、さらに神経細胞間の情報伝達を活発させます。
α‐リノレン酸の持つ抗炎症・抗酸化作用は、脳の神経細胞の保護にも役立っているといわれています。実際、くるみを摂取すると加齢性の認知能力・運動能力の低下が改善したり、記憶力・洞察力が向上することは、人間を対象とした臨床テストや動物実験でも確認されています。
2-4.腸内環境を改善する
人間の腸内に存在する約100兆個の腸内細菌のうち、ビタミンの合成や免疫の維持に働くものが善玉菌、腸内の腐敗を進めて毒素を作り出すものが悪玉菌と呼ばれています。加齢とともに腸内では悪玉菌の勢力が拡大してきて、便秘がちになるだけでなく、血糖値やコレステロールの上昇にも影響をおよぼします。
糖や脂質の分解など、腸の機能が低下してしまうからです。そこで、腸内環境の改善に役立てたいのがくるみ。くるみを食べると、腸内で悪玉菌に対抗する酪酸菌が増えて、善玉菌が勢力を盛り返すことがわかっています。酪酸菌が作り出す酪酸は腸の粘膜の傷を修復して、腸の活動を正常に整えるほか、免疫システムを調節する役割もあります。α‐リノレン酸、タンパク質、食物繊維など、くるみならではの有効成分のバランスが、腸内環境の改善に働きかけていると考えられています。
2-5.冷え、貧血など体調不良を回復させる
くるみに含まれている栄養成分の中でも、女性に多い冷えの改善に働くのがビタミンE。末梢血管の血液循環を促して、血行不良による手足の冷えやむくみを緩和します。食事で摂取した糖質をエネルギーとして活用したり、疲労物質の除去にも働くビタミンB1もくるみに含まれています。スタミナ補給や疲労回復にもくるみはおすすめといえます。
そのほか、血液中のヘモグロビンを合成する鉄と、それを補助する銅もくるみには多く、貧血予防にも頼りになる食品です。
3.くるみとヨーグルトを一緒に食べるといい理由
ナッツであるくるみと、乳製品のヨーグルト。あまりなじみのない組み合わせのようですが、両者の効能をくらべると相性バッチリ。ぜひ一緒に食したい名コンビなのです。
3-1.糖の安定をますます促進
インスリンの効き目を高めるくるみに対して、インスリンの分泌量を増やしてくれるのがヨーグルトの効能です。その主役となって働くのが、ヨーグルトに含まれているタンパク質。特にホエイというタンパク質は、インスリンの増量を促すGLP‐1という腸管ホルモンの分泌を盛んにすることがわかっています。
つまり、くるみヨーグルトを食べるとインスリンが多く分泌されて、しかもその効き目が改善するようになり、効率的に血糖値を安定させることができるわけです。なお、ホエイとはヨーグルトの表面に浮いている上澄み液そのもの。くるみヨーグルトを食べるときは、この上澄み液も捨てずに食べることがポイントとなります。
3-2.腸内環境をますます改善
ヨーグルトに含まれる乳酸菌に整腸作用があることはご存知のとおり。乳酸菌は腸内の善玉菌を増やして、悪玉菌の勢力拡大にストップをかけます。消化の過程で、胃酸によって乳酸菌が死んでも、腸に届いた乳酸菌の死骸は善玉菌のエサとなります。
また、食物繊維のように悪玉菌を吸着して体外に排出させるといわれています。腸内の善玉菌・悪玉菌のバランスを整えるくるみの効能が、ヨーグルトによってますます強化されるわけです。
3-3.骨の強化にますます役立つ
骨の材料となるカルシウムの補給源として、代表格といえるのがヨーグルト。原料である牛乳にそもそもカルシウムが豊富なのですが、ヨーグルトの乳酸菌が作り出す乳酸は、カルシウムをより吸収しやすいように変化させる特徴があります。くるみにもカルシウムは含まれており、ヨーグルトとの合わせ技で摂取量がアップします。
さらに注目すべきは、クルミに豊富なα‐リノレン酸が骨の保護にも働くこと。毎日の食事でくるみなどからα‐リノレン酸を積極的に摂ると、骨の新陳代謝のバランスが整って、新しい骨の形成が助けられることが報告されています。特に女性の場合、加齢にともなって男性よりも骨がもろくなりやすいといわれていますが、その予防策としてもくるみヨーグルトは食べる価値ありです。
4.くるみヨーグルトの作り方と食べ方
くるみとヨーグルトを用意すれば、それで準備は完了。手軽にパパッと作れることも、くるみヨーグルトのメリットです。砕いたくるみが余ったら、ジッパー付きの冷凍保存用ビニール袋に入れて密閉し、冷凍庫で保存します。くるみは冷凍すれば1年は保存できますが、栄養の損失を考えるとなるべく早めに食べ切るようにしましょう。
4-1.くるみヨーグルトの材料(1食分)
・くるみ……3~4かけを目安に好みで(多めに砕いて保存しておいてもよい)
・ヨーグルト(無糖)……100g
4-2.くるみヨーグルトの作り方
①くるみをビニール袋(破れないように厚手のもの)に入れる
②すりこぎなどでクルミを細かく砕く。歯ごたえをよくするなら大きめの粒を残しておくとよい
③皿に盛ったヨーグルトに砕いたくるみを振りかければできあがり。1日1回食べる。甘みを足す場合は、ハチミツや刻んだバナナを適宜加える
4-3.くるみヨーグルトの食べ方
くるみの消化吸収をよくするためには、よく噛んで食べることがポイント。食べるタイミングは、食事どきやおやつの時間などいつでもかまいません。ただし、特に血糖値の安定を目標とする場合、おすすめは食事の前に食べること。食前にヨーグルトを食べておくと、その後でご飯やパンを食べたときに、インスリンの分泌増加を促すヨーグルトの作用が発揮されます。
さらに、ヨーグルトの乳酸には、食べたものが胃から小腸に移動していく時間を遅らせる作用があります。その結果、ご飯やパンに含まれる糖質の吸収がゆっくりになって、食後血糖値の急上昇がますます抑えられるわけです。
5.くるみをヘルシーに食べる!なるほどQ&A
Q① くるみを選ぶときのポイントは?
くるみを選ぶときには、殻つきならば手に持ったときに重みがあり、殻に小さな穴が空いていないものを選びます。殻の色は薄い方が新鮮です。 入手するのに一番手軽なのは、殻をむいたクルミをパック詰めしたものでしょう。加熱していない生のくるみか、無塩・ノンオイルでローストした素焼きくるみがおすすめです。塩で味つけしたり、油でコーティングしてあるものはなるべく控えます。
Q② くるみをヨーグルトに乗せる量は増やしてもいい?
ヨーグルトにトッピングするくるみの量は好みで調節してかまいませんが、カロリーオーバーにならないように注意しましょう。くるみの大きさにもよりますが、1日に食べる目安量としてはくるみ6~7個(25g程度)までとすること。この分量だとエネルギー量は約160キロカロリーで、茶碗一杯分のご飯(約230キロカロリー)よりも少なめです。
Q③ 糖質制限中でもくるみは食べてもいい?
くるみなどナッツ類は一般にカロリーが高めといわれますが、これは糖質ではなく脂質の量が多いことによるもの。くるみの場合、エネルギーの70%を脂質が占めています。脂質そのものは血糖値の上昇に大きくは結びつきませんし、目安量を超えて食べなければ肥満の心配はなし。
さらに、くるみの脂質にはこれまでご紹介したとおり、健康効果が幅広いα‐リノレン酸が多いのです。一方で、糖質はどれくらい含まれているかというと、くるみ100g当たりの糖質量は4・2g。アーモンドやカシューナッツなど、ナッツ類100g当たりの平均糖質量は17.9gですから、くるみはその1/4以下とかなり低めです。
ちなみに、全食品の100g当たりの平均糖質量は18・5gです。このように数字を見くらべてみると、くるみは栄養価が高い一方で、明らかな低糖質食品。糖質の摂り過ぎが気になる、糖質制限ダイエットをしているという方でも、安心して口にすることができます。
Q④ ヨーグルト以外にくるみと相性のいい食品は?
ヨーグルトと一緒に食べるのに少し飽きてきたかなというときは、砕いたクルミをほかの料理にトッピングするのもいいでしょう。くるみの効能をサポートして、血糖値の安定などに役立つ一品をご紹介します。
- くるみみそ汁……みそ汁にくるみを振りかけるとコクが増すだけでなく、歯ごたえのアクセントにもなります。みその褐色の色素であるメラノイジンは、インスリンを分泌する細胞の機能を高めます。
- くるみキムチ……キムチにくるみを混ぜて食べると、辛みがまろやかに抑えられます。キムチの材料になる白菜には、ミネラルのセレンが含まれています。セレンはインスリンの働きを助けて、細胞内への血糖の取り込みを促進するといわれています。
- くるみ納豆……くるみを納豆に混ぜて、好みでタレやしょう油で味つけして食べます。納豆の酵素は血栓を溶かして血流を改善するほか、骨の強化に役立つビタミンKも豊富。くるみの効能をバックアップしてくれます。
6.まとめ
身近にいつもある食品で、健康効果もきわめて優秀なくるみ。相性抜群のヨーグルトと一緒に食べれば、血糖値やコレステロールの安定を力強く手助けしてくれます。毎日おいしく食べるうちに、血管、腸、骨の若々しさも保持されるなど、いいことづくめのヘルシーメニューといえるでしょう。
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