健康診断の中性脂肪の値、あなたは高かったでしょうか?それとも低かったでしょうか?まずは一般的な中性脂肪の基準値を見てみましょう。日本人間ドック学会(http://www.ningen-dock.jp/public/method)によると次のように表されています。
この赤枠の中以外の方はもちろん改善が必要ですが、基準値の境界にいる方も注意が必要です。中性脂肪が高い場合には動脈硬化などの大きな病気のリスクが高まることはよく知られていますが、中性脂肪が低い場合にも体に悪影響を与えることは知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は中性脂肪が低くいとどうなるのか?なぜ低くなってしまうのかをご紹介していきます。
目次
1.中性脂肪が少ない理由の多くは食事の偏り
中性脂肪が少ないという場合、その多くは20代~30代の女性にみられます。理由はダイエットなどによる食事の制限にあり、過度な食事制限などによって、炭水化物の摂取が減り、値も減ります。また、そのようなことをしていないという人でも小食などのために栄養が偏り、中性脂肪が少なくなってしまう場合もあります。一般的にダイエットをするのは女性が多いため、その年代の女性の中性脂肪が少なくなりがちです。ですが、理由はそれだけではありません。
1-1. 女性は中性脂肪の平均値が低い
下記の表は厚生労働省による中性脂肪の男女別中性脂肪の平均値の資料を表にしたものです。
厚生労働省:血清中性脂肪(トリグリセライド)値の平均値および標準偏差の年次推移(20歳以上、性・年齢階級別)
各年代において女性は男性に比べ、非常に中性脂肪の数値が低いことがわかります。20代、30代においてはほぼ半分と言える数値になっています。中性脂肪の下限値が30であるにも関わらず、元々低い20代、30代の女性がダイエットを行い、中性脂肪の値が減れば、結果は想像の通りですね。ではなぜ女性は男性よりもこんなに中性脂肪が低いのでしょうか。その理由は女性ホルモンにあります。
1-2.中性脂肪を減らす女性ホルモン『エストロゲン』
女性ホルモンである「エストロゲン」は中性脂肪を下げる役割を持っています。エストロゲンは血中の悪玉コレステロールを、肝臓に取り込むための受容体を増やす仕組みを持っています。悪玉コレステロールが減り、善玉コレステロールが増えることで、コレストロールと相関関係にある中性脂肪も低下します。
さらに中性脂肪が減ることで、超善玉物質とされるアディポネクチンと言われるホルモンが増加します。このアディポネクチンが糖質やコレステロールの代謝に関与し、中性脂肪の低減に寄与します。そのような循環が中性脂肪を低くなりやすくしています。
原因が当てはまらず、中性脂肪が低いという方は病気の可能性も・・?→ 中性脂肪が低いのは病気のサイン?知っておくべき5つの原因とは?
2.低中性脂肪が引き起こす病気
女性は中性脂肪が低くなりやすいことがおわかりいただけたと思いますが、中性脂肪が低いことで悪いことはあるのでしょうか。高いならともかく、低い分には大きな問題ではない?と考えているかもしれません。もちろん値が高い方がリスクは高いとされていますが、低中性脂肪でも病気を引き起こすケースもあります。
2-1.脂溶性ビタミン欠乏症
中性脂肪が少ない状態が続くことで、『脂溶性ビタミン欠乏症』を引き起こす場合があります。ビタミン A、D、E、K は、油脂に溶けることから脂溶性ビタミンと呼ばれますが、普段は肝臓や脂肪組織に貯蔵され、必要になった時に中性脂肪に溶け込んで体内を巡ります。ですが、中性脂肪が少なくなることで、必然的に脂肪に溶けて体を巡る脂溶性ビタミンも運べなくなるため、体内でビタミンが不足してしまいます。
参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2005年版)
上記のように、4つの脂溶性ビタミンが不足することで体の中で様々な悪影響がでてくるようになります。重大な疾病はもちろんのこと、女性が気になる肌の乾燥や冷え性もビタミン不足により引き起こされます。
また、「若返りのビタミン」と言われるのが、ビタミンEです。抗酸化の効果を持つビタミンEにはアンチエイジング効果があるとされていますが、中性脂肪が不足すれば細胞まで運ぶことができず、老化が促進されてしまいます。
2-2.低中性脂肪血症
中性脂肪が基準値を下回ることで、低中性脂肪血症と診断される場合があります。低中性脂肪血症とは、血液に含まれる中性脂肪(トリグリセリド)の値が低い状態のことです。低トリグリセリド血症とも呼ばれます。(実際の診断には中性脂肪の値だけではなく、コレステロール値も見て判断されます。)低中性脂肪血症になると次のような症状が起こります。
- 倦怠感
- 動悸、息切れ
- めまい、ふらつき
- だるさ
- 偏頭痛
このような症状が出る理由は脳にブドウ糖が行き渡らないことにあります。脳を動かすエネルギーはブドウ糖しかありません。ブドウ糖は食事から得られますが、ダイエットをしている場合にはこの脳への栄養が不足しているため、上記の症状がでます。ダイエットは一時停止するようにしましょう。。
3.中性脂肪を上げる3つの習慣
中性脂肪が少ない場合は、病気や体調を崩さないためにも、適正に数値を上げていく必要があります。食事で栄養を補っていきますが、次の3つの習慣を心がけてみてくださいね。
3-1.1日3食必ず食べる
過度な食事制限や少食で低栄養状態の場合、食事を抜く、食べる時間が不規則であるケースがあります。まずはある程度決まった時間に3食ともしっかりとる、という習慣をつけましょう。
3-2.炭水化物を多めに摂る
中性脂肪が低いということは、体内がエネルギー不足に陥っている状態なので、エネルギーになりやすい炭水化物を積極的に摂りましょう。ごはん、パン、麺類など、主食に多く含まれています。
3-3.炭水化物、たんぱく質、脂質をバランス良く摂る
エネルギー確保のためと炭水化物に比重を置きすぎず、たんぱく質、脂質もきちんと摂るよう、意識を向けていくことが大切です。栄養素をバランス良く摂ることで、中性脂肪が体に必要量蓄えられます。また、タンパク質からできるアミノ酸や脂質からできる脂肪酸などは、脳細胞の質を高めるのに重要な成分です。脳だけでなく筋肉、血管など体内組織の大切な構成成分なので、しっかり摂るようにしましょう。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。中性脂肪は高いことは大きな病気を引き起こすリスクを高めるため、そちらに注視しがちですが、低いことによる弊害もあります。特にビタミンの欠乏は女性にとって肌やアンチエイジングに関わる大問題。外側だけでなく、中身も“キレイ”を目指しましょう
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