• 血糖値
  • 2018/11/28

インスリンで血糖値は下がる!インスリン注射の効果とリスクをご紹介!

血糖値

血糖値が高い状態が続くと、すい臓が疲れてインスリンを分泌する能力が低下してしまいます。インスリンの分泌が低下すると血糖値が常に高い状態となり、糖尿病が発症してしまいます。糖尿病の発症早期は少量のインスリンが分泌されていますが、やがてはほとんど分泌されなくなり、インスリンを注射で補わなければ生きていけないような状態に陥ってしまいます。しかし、なぜ血糖値を下げるのにインスリンが必要なのでしょうか。また血糖値が高い状態の糖尿病ですが、どこまで血糖値が上がるとインスリンを注射しなければならないのでしょうか。

1、血糖値を下げることができるのはインスリンだけ

血糖値やインスリンいう言葉は聞いたことがあっても、その意味や関係性について知らないという方も中にはいることでしょう。ここで少し詳しく説明しておきます。

1-1 血糖値とは血中の糖濃度のこと

血糖値とは血液中の糖の濃度のことを言います。血糖値は、炭水化物など糖質を含む食べ物を食べることで、その値は上がります。
ちなみに夕食後10時間以上絶食した後の血糖値を空腹時血糖と言いますが、その空腹時血糖値が110mg/dl未満であれば正常な血糖値と言われています。
また126mg/dl以上の場合は高血糖つまり糖尿病と判断されます。

1-2 インスリンとは血糖値を下げる唯一のホルモン

インスリンはすい臓から出るホルモンのことで、血糖の量が増えると、すい臓よりすぐにインスリンが分泌されます。血糖が全身にとどくと、インスリンの働きによって臓器に血糖を取り込ませエネルギーとして利用したり、脂肪を合成し脂肪分解を抑制したりします。こうして、食後に増加した血糖はインスリンによって速やかに処理され一定量に保たれます。
このような働きをするのは、インスリン以外にはありません。そのため血糖値を下げるためにはインスリンは必要不可欠なものなのです。

参考:糖尿病DMTOWN
   大日本住友製薬
   

インスリンが糖を細胞へと招き入れる
インスリンによる糖質の吸収

2 インスリンが十分に働かなくなると高血糖を招く

インスリンは血糖値を下げる唯一のものです。そのため、インスリンが働かなくなると当然血糖値は下がらなくなり、血糖は上がっていきます。これには2つの仕組みがあります。

2-1 インスリンの作用不足により血糖値が高くなる

インスリンの働きは、運動不足、肥満、ストレス、加齢などにより悪くなってしまいます。つまりインスリンはたくさんあるのに血液中の糖が臓器の中に入っていけない状態になっているということです。これをインスリン抵抗性といいます。インスリンはあるのに血糖値は下がらず、すい臓はさらなるインスリンを分泌しようとし、機能が徐々に落ちてしまい、インスリンの分泌の低下を招きます。こうなると高血糖状態が続くようになってしまいます。

 

インスリンの機能が低下し血管内に糖がたくさん残ってしまう

インスリンの機能低下による血糖値上昇

2-2 インスリンが出なくなり血糖値が高くなる

はっきりとした原因はわかっていませんが遺伝的要因が高いとされる、インスリン分泌障害によっても血糖値は高く保たれてしまいます。分泌障害があると、インスリンの分泌が遅れ、また分泌量も少ないため、血糖を全て処理できず、血糖が高い状態を保ってしまいます。血糖が高いため、すい臓は更なるインスリンを分泌しようとします。過剰にすい臓がインスリンを分泌してしまい、すい臓の機能が低下しインスリンを分泌しなくなってしまいます。そして高血糖を招く結果となります。

参考:患者さんのための糖尿病ガイド

3 高血糖の状態が常時続くとインスリンの注射が必要

血糖値が高い状態が続くと、インスリン抵抗性やインスリン分泌不足が助長され、血糖値が常に高い状態となります。

3-1 血糖値が常時350mg/dl以上になるとインスリンが推奨される

血糖値でいえば、空腹時血糖値250mg/dL以上かつ随時血糖値350mg/dL以上の場合はインスリンが推奨されます。そのほかにもインスリンが推奨される場合があります。これらのことをインスリン療法が相対的適応になるといいます。必ず注射しなければならないわけではないが、注射をしたほうがいいという場合です。これは血糖値の値だけでなく、いろいろな状況があります。例えば「経口薬療法では良好な血糖コントロールが得られない場合」、「やせ型で栄養状態が低下している場合」、「ステロイド治療時に高血糖を認める場合」、「糖毒性(高血糖によって起こる悪循環)を解消したい場合」、「食事療法での血糖コントロールが不十分」などがあげられます。

3-2 血糖値が600mgdL以上になるとインスリンの注射が必須となる

血糖値が600mg/L以上になると、血糖値だけが原因ではないのですが、高浸透圧高血糖症候群という高血糖状態が続いた場合発症する合併症を引き起こした可能性があります。またそのほかにもインスリン注射が必ず必要になる場合があります。これをインスリン療法の絶対的適応といいます。血糖値の値だけではなくその他にも「インスリン依存状態(いわゆる1型糖尿病)」、「高血糖性の昏睡(糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、乳酸アシドーシス)」、「重症の肝機能障害、腎機能障害を合併しているとき」、「重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき」、「糖尿病合併妊婦(妊娠糖尿病で、食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)」など、これら5つの状態があてはまり、インスリンの注射が必ず必要になる場合です。基本的には高血糖の合併症を引き起こしている場合などには必須になるようです。少しでも変だと感じたら医療機関に連絡することをおすすめします。

参考:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013

   メディマグ.糖尿病

4 インスリン注射によるリスク

インスリンを注射することによるリスクとしては、低血糖があげられます。インスリンにより血糖がコントロールされると、血管中の糖質はどんどん体内に取り込まれます。インスリンの注射は糖質を取り込ませる能力が高くなりすぎて、今度は反対に低血糖が引き起こされることがあります。

4-1 低血糖症になる可能性

低血糖とは血糖値が正常範囲以下にまで下がった状態のことをいい、冷や汗、動悸、意識障害、けいれん、手足の震えなどの症状があらわれます。一般的に血糖値が70mg/dL以下になると自律神経の反応(血糖値を上げようとする)による症状が出てきます。さらに血糖値が下がり、50/dL以下になると、中枢神経にまで影響し、脱力感や集中困難、眠気、めまい、疲労感、ものがぼやけて見えるなどの意識障害等の症状が出ることもあります。

低血糖が進行すると意識が朦朧となり、もっと進行すると昏睡状態となり、いくら揺り動かしても反応しないようになる。手当が遅れれば死亡することもある。したがって、よく知っておく必要がある。

どんなときに低血糖を起こすか。多くはインスリンの注射を行った後に食事を食べないときがあげられます。急な来客があり対応したり、急用ができてしまい、そのまま外出してしまったなどが考えられます。このときは何か炭水化物を含む食物を少しでも食べて対応しましょう。

また、インスリンを注射して食べるまで1520分くらいあるので、インスリン注射後、お風呂などに入り、そのあとに食事を食べようとしると、血行が盛んになってインスリンの効果が速く現れて低血糖になるなどのケースが考えられます。そうならないためにも医師の指示通りにインスリンを注射するようにしましょう。

参考:糖尿病サイト

   薬物療法(インスリン注射)をよく知ろう

5、血糖値が正常値でなく高血糖値でもない人は要注意

血糖値の正常値は空腹時で100mg/L以上110mg/L未満、高血糖時の血糖値は空腹時で126mg/L以上となっています。そのどちらでもないのは血糖値が空腹時110mg/L以上125mg/L未満の人のことになります。これらは、いわゆる予備軍といわれるところになります。

予備軍だからまだ大丈夫と思っている方たちもいるかもしれません。たしかに症状としてはなにも出てきていないので無理もありません。しかし、からだの中では、すでに変化が起き始めているといわれています。

例えば、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが出にくくなったり、効きづらくなったりする変化は、高血糖となるずっと前の段階からあると言われています。予備群と言われる状態から高血糖になるにつれて、インスリンの働きは徐々に弱まっていきます。

インスリンの働きが徐々に弱くなっていっているということは、それだけ高血糖になりやすい状態にあるということです。

参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター

 

5-1 血糖値が正常値でなく高血糖値でもない人にある特徴

いわゆる予備軍といわれる人たちには、いくつかの条件があてはまる人に多いようです。以下にその条件を挙げておきます。自分がどれかに該当していないでしょうか。該当しているのなら要注意です。

1、血縁者に糖尿病の人がいる

2、健診で血糖値が高めとか、尿糖が出ているといわれたことがある

3、食べすぎ飲みすぎの習慣がある人

4、太っている人

5、若いのに歯周病がひどい人

6、おできなどができて治りが悪い人

参考:一般社団法人日本臨床内科医会 

6、インスリン注射を避けるための予防策

インスリンの注射を避けるにはまずは高血糖にならないことです。血糖値が正常なひとならば、現状維持で問題ありませんが、血糖値が正常値でも高血糖値でもない人たちは予防策が必要です。予防策としては主に食事や運動など生活習慣の見直しです。

6-1 食事のとり方を見直す

高血糖にならないためには、まず血糖値を上げない食事をすることが重要になります。同じ量を食べても血糖値を上昇させない食べ方がありますのでご紹介します。

1、ゆっくり食べる

早食いをすると、食べた物が早く腸に到達するので、血糖値が急上昇します。また、早食いでは食べすぎになりがちです。

2、朝食を欠かさず、1日3食

食べる回数が少ないと、1回に食べる量が多くなり、食後の血糖値がより高くなります。

3、いろいろな素材をとり混ぜて食べる

品数が少なく栄養バランスが偏った料理は、短時間で消化吸収されるため、血糖値が上がりやすくなります。逆に、いろいろなものを少しずつとりそろえて食べると、消化吸収に時間がかかり、血糖値は上がりにくくなります。

4、血糖値の上昇を抑えるものをメニューに入れる

野菜やきのこ・海藻、精製度の低い穀物などは、食物せんいが豊富で、血糖値の急な上昇を抑えてくれます。また、血糖値を上げにくくする特定保健用食品や機能性表示食品を利用してもよいでしょう。

5、ビタミンDとカルシウムが豊富な食材を積極的に食べる

ビタミンDは、インスリン分泌に関与していること、カルシウムはインスリンを分泌させるための道筋を活性化させることに関与していることが報告されています。これらが不足するとインスリンの作用が低下するという報告もあることから、2つが高血糖に関連している可能性が考えられます。またビタミンDは、カルシウムの吸収に関与していることから、2つの栄養素は相乗効果を発揮し、高血糖になるリスクが低くなったと考えられます。

6、腹八分目

満腹感を得ようとしない

参考:一般社団法人日本臨床内科医会 

   国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター

   Calcium, vitamin D and dairy intake in relation to type 2 diabetes risk in a Japanese cohort. Diabetologia. 2009 Dec;52(12):2542-50

6-2 からだを動かす習慣をつけ、5%以上体重を減らす

日ごろの運動量が少ないと、体内で糖が処理されにくく、血糖値が上がりやすくなります。積極的にからだを動かすようにしましょう。本格的なスポーツでなくても、少し歩いたり、いつもはエレベーターで昇るところを階段で昇るなどでも十分です。手軽にできて、そのうえ糖尿病予防に効果的な運動です。通勤の際に電車やバスを一つ手前の駅・停留所で降りたり、買い物で少し遠回りしてみたりと、ちょっと工夫をして歩く機会を見つけるようにしましょう。

 運動することで体重も減り始めると思いますが予備軍の方はできれば5%以上は減らすようにしましょう。というのも、高血糖状態の人たちは、体重を5%以上減らすと治ったのに近い状態を維持することができる場合が多いそうです。例えば体重が50kgの人の場合は2.5kg以上減量し、47.5kg以下の体重に、80kgの人は4kg以上減量し76kg以下にするのが目標です。

 ちなみに糖高血糖になって4年以上たつ人でも体重を5%以上減らすことで、84%が血糖値を正常域まで下げられることが判明したそうです。また体重を減らすことで、インスリンが効きにくくなる“インスリン抵抗性”の改善も期待できます。

 参考:糖尿病.ネットワーク

   一般社団法人日本臨床内科医会 

7、まとめ

血糖値とインスリンは、密接に関係していています。というのも血糖値を下げることができる唯一のホルモンがインスリンだからです。そのため、このインスリンが作用不足やインスリンそのものが分泌されないと高血糖状態になってしまう可能性が高くなってしまいます。そして程度によりますが、高血糖状態になると、今度は、自前のインスリンでは役に立たないため、インスリンを注射によって体内に入れる必要が出てきます。インスリンの注射をやり始めると、今度は反対に低血糖のリスクが生じ、低血糖が進行すると最悪死亡することもあります。そうならないためにも医師の指示通りにインスリンは注射しましょう。

また高血糖予備軍の人は要注意です。予備軍の人たちは、正常な人たちよりも高血糖になりやすい状態にある可能性が高いです。そのためしっかりと血糖値をコントロールしインスリンの注射のお世話にならないようにしましょう。

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